僕はオーガニックに興味がありません。

在宅医療カレッジ 佐々木理事 2023年 2月24日 Facebook記事より 

僕はオーガニックに興味がありません。

生産者のメッセージや食材に関するストーリーは好きですが、化学肥料や農薬が使われているものは食べない、なんてことはありません。食品添加物も細かく気にしていません。

僕の食事を見る人たちからは、もっと「いいもの」を食べたら?とよく言われます。

だけど、身体に本当にいいものって何でしょうか?オーガニック玄米を食べようと、日清カップヌードルを食べようと、身体に吸収されるのは同じブドウ糖。たんぱく質はアミノ酸に、脂質は脂肪酸とグリセリンに分解されて吸収されます。

「身体が喜ぶ食べ物」という表現がありますが、喜びを感じているのは身体ではなく脳ミソ。前頭前皮質から自己満足の神経伝達物質が大放出されているに過ぎません。(もちろん脱水のときの水分補給は、身体が大喜びすると思いますが)

食品添加物も身体によくない化学物質と一般には認識されています。でも、添加物は食品の衛生安全性を高めます。添加することの利益が不利益を大きく上回るからこそ使用が許可されています。

食品添加物はいらないというのは、薬やワクチンなんていらないというのとちょっと似ているようにも思います。添加物も薬も使わないほうがいいと思います。

しかし、人間の平均寿命が20歳から80歳に伸びたのは、食品衛生と医学の進歩によるところが大きいのは確か。いずれも化学がその発展を支えてきました。

添加物は(薬もワクチンも)上手に利用するべきもので、極端に忌避すべきものではないと思います。

前置きが長くなってしまいましたが、「身体にいい食事」とは何なのか。

特に高齢者ケアに関わる仕事をしていると考えさせられる機会がよくあります。

僕の結論は次の2つ。

まずは「質よりも量」。そして「『何を食べるか』より『誰と食べるか』」。

高齢者の多くは、とにかく食事の絶対量が少ない。そしてたんぱく質の摂取量も少ない。これが低栄養・筋量減少(サルコペニア)・フレイルの大きな要因となっています。

そして、高齢者の場合、これらが誤嚥性肺炎や転倒・骨折、要介護や死亡のリスクを高めます。高齢者はとにかくしっかり食べて、体重・筋肉を守ることが大切だ、ということはさまざまなデータが示しています。

しかし、「しっかり食べなさい」というのが、実は簡単ではありません。

元気な僕ですら、食事を準備するのはおっくうな作業。

まして買い物に行くもの大変、キッチンに立つのも大変、そんな高齢者世帯で、毎日きちんと食事をしていくことは容易ではありません。

そこに基礎疾患や薬の作用による食欲低下や摂食嚥下機能の低下が加わります。在宅高齢者の食支援は、まさにカオスです。

病院の優秀な管理栄養士さんたちは意気揚々と栄養計算・食事指導をしてくれます。しかし、高齢世帯になると指導通りの食生活を日々実践するのは実はかなり難しいのです。

どうすれば、高齢世帯で「身体にいい食事」を生活の一部にできるのか。そのためには「生活を知る」ことが大切です。

僕たちのチームで在宅高齢者の食支援をするとき、次の5つを必ず見るようにしています。

ーーーー

① まずは口。

きちんと噛めること、舌が動かせること、飲み込めること、などを確認する。入歯がガタガタだときちんと噛むことができない。口腔内が乾燥していたら食塊形成や飲み込みができないし、舌の上にカビが生えていたら味覚も障害されてしまう。美味しく食べられる口をまずは作ることが重要になる。

② 次に冷蔵庫。

普段何を食べているのか。ちゃんと食べられているのか。食品の衛生管理がきちんとできるのか。そのあたりを確認する。

③ 次にキッチン。

調理をしているか、調理ができる状態か、できるとすれば、どの程度の調理が可能なのか。キッチンの衛生状況や調理器具、使用状況などから、そのあたりを確認する。

④ 次に財布(経済状況)。

お金があるなら高級な介護食を頼んでもいい。だけどそうでないなら、食費予算の中でのやりくりを考えていかなければならない。

⑤ そして、日常生活の活動範囲。

近くに食品や食材を調達できる場所があるか。そこに行く頻度はどれくらいか。行く手段は何か。ネット通販などを利用できるか。そのあたりを確認した上で、日常的に入手が可能な食品・食材から食事を考える必要がある。

ーーーー要介護高齢者のみならず、高齢世帯の多くはさまざまな制約の中で生活しています。それは食生活にも大きな影響を及ぼします。そのことを知らないままに病院で栄養指導や食事療法を指示されても、きちんとできるわけがありません。

じゃあ、どうすればいいのか?

そこは在宅訪問管理栄養士の出番。

患者さんの病気や栄養状態だけではなく、その人たちの生活の全体をじっくりとみながら、それぞれの生活の中で、自然に続けられる食生活を一緒に考えてくれます。

そんな在宅訪問管理栄養士の中でも、誰もが認めるスター選手が塩野崎淳子(シオジュン)さん。目の前の患者さんの課題の本質を見抜く、合理的かつ実現可能な解決策を考える、

そして何より、その人たちが日常生活の一部として実践できる具体的な方法を提案してくれます。

シオジュンさんの「70歳からは超シンプル調理で『栄養がとれる』食事に変える」は10万部の大ベストセラーになりました。高齢世帯の方、高齢のご家族と暮らす方、そして高齢者医療・ケアに関わる専門職の方々、まだ手に取っていない方にはぜひ強くおすすめします。

美食家の方々には文字通り単なるシンプルなレシピ集に見えるかもしれません。だけど、生活にさまざまな制約なる高齢世帯にとっては「シンプルさ」は前提条件。

その中で、身近な材料で、簡単なプロセスで、食生活をここまで豊かにできる!そんな感動があります。必要なものを上手に確保しつつ、摂りすぎるべきでないものを無理なく減らせる。そんなアイデアも満載です。

今週の日曜日の夕方(16:30~18:00)、著者のシオジュンさんに「高齢者の低栄養を防ぐ食生活の工夫」についてお話をしていただけることになりました。

https://lib-action230226.peatix.com/

夕食前のひと時。 ご家族と一緒に、いずれ高齢になる私たち自身や私たちの家族のためにお話を聞いてみてはいかがでしょうか。必要最低限の栄養バランスは意識しながら、家族や友人とおおらかに食事を楽しむ

。簡単に手に入るものや安くて美味しい季節の食材をシンプルに調理して、美味しくいただく。オーガニックや無添加にこだわって、食の楽しみの範囲を狭めてしまうよりも、ずっと健全なんじゃないかと思います。

122歳まで生きたとされるフランスのジャンヌ・カルマンは、110歳で転倒・骨折するまで自由に暮らし、117歳までタバコを吸い続け(介護者への遠慮から禁煙したとのこと)、亡くなるギリギリまで主食はチョコレートと肉、野菜が大嫌いだったというのは有名なエピソード。

もちろんチョコをたくさん食べれば長生きできる、ということではないが、高齢者にとっての「健康な食事」とは何なのか。 一度、根本から考えてみませんか?

https://lib-action230226.peatix.com/

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