「親不孝介護」でいこう。

佐々木理事 2022年 12月15日 Facebook記事より

「親不孝介護」でいこう。

住み慣れた自宅で、家族がケアをする。

自然なことだと思います。最後まで家族の一員として、家族とともに生活を続けながら、そこから穏やかに旅立っていく、そんな患者さんの最期に伴走させていただいてきました。

しかし、ご家族の存在が本人にとって最適な選択、最適なケアの選択を困難にしているケースも多く存在します。また、ご家族が介護のために、仕事や学校をやめたり、社会から孤立してしまうケースも少なくありません。

家族は介護にどう関わるべきなのか。

16年の在宅医療の経験を通じて感じたことを日経ビジネスでお話させていただきました。

「在宅医療は、支援の対象としてご本人だけじゃなくて、家族も含めた環境も見ていかなくてはいけません。ですのでご家族には、「どういう在り方がご本人にとって最適なのかというのをまず考えましょう」とお話ししますね。遠回りのようですが。その中で「家族として関わらねばならないところと、家族が関わらなくてもいいところと、家族が関わらないほうがいいところがあるんですよ」と、少しずつ伝えるようにはしています。」

「やっぱり家族だからこそ、子どもたちが思っている一番輝いていた時点の親が印象として大きくて、そことのギャップに打ちのめされて、「この失われた部分をどうすれば埋められるのか」というところに介護のアウトカムを求めてしまう。でも、それをやればやるほど溝は深まっていく。それで親も子も双方、くたくたになってしまう。」

▶「年をとったらハンバーガー!」老後も介護も常識を疑え

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00505/110900006/

「つまり、本人にとっての利益は何かということよりも、「家族として責任を果たすにはどうすべきか」みたいな、おかしな観念論が出てきて。「一人暮らしで置いておくわけにはいかないだろう」みたいな“世間の常識”で決まったりするんですよね。」

「例えば、夫が亡くなってから人生観が変わる妻、というケースはたくさんあります。だけど、お子さんはやはり、自分たちが育ててもらったころのお母さんをイメージしているわけです。それはその人の長い人生のごく一部で。」

「勝手に自分の記憶だけで「お母さん」という偶像をつくって、最適なケアを一生懸命考えているんだけど、今、この人が何を大切にしてどんな暮らしをしているかということにあんまり寄り添わない。そういうことはありますね。」

▶もし認知症になっても、親の尊厳は保てる!

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00505/111000007/

「あと、力なくただぽたぽた重力に引っ張られれば下りていける、ということもあるんですよ。」

「考え方を改めれば、下り坂は決してつらい道ではないんですよ。これから先の視界も楽しめるし、これまでの振り返りもできる。急いで行く必要もないから回り道してもいいし、時に障害すら楽しめるぐらい、気持ちにゆとりを持って進めばいいんです。」

「みんな独立した1人の人間ですから。「血がつながっている」という理由だけでその人が何かをやらなきゃいけないということはない、と知ってもらいたいです。もちろん「リソースが足りないから、家族に手伝ってもらえるんだったらそれはそれでありがたい」という介護関係者もいますし、家族なんだから、一緒に暮らす仲間としてやってもいいよねという範囲はあってもいいと思うんですけれど、ただ、そういうことは、どっちかというとケアを困難にする。」

▶老化は止められません。だから介護は「撤退戦」です

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00505/111100008/

「親の死が怖い、という気持ちも分かるし、死ぬまでの時間を引き延ばしたいのも分かるけれど、本当にその人が大事なら、死なないようにするよりも、生きているうちにちゃんと関わりなさいよ、という気持ちはありますね。」

「家族の発言力が大き過ぎるのと、医療が介護の上に出しゃばり過ぎているというのはありますね。医者が認知症と言っているから、もう家にいるのは無理なんじゃないかとか、心不全だから食事を塩分制限しなきゃいけないんじゃないかとか。「治療のために生きている」人がたくさんいますよ、日本のケアの現場に。」

▶「老化」と「病気」、「介護」と「治療」の区別から始めよう

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00505/111100009/

「どういう生き方がしたいかが決まれば、医療やケアはおのずと決まるし、逆に医療やケアに何ができるか分からないのにどんな医療やケアを受けたいかなんて、考えさせる順番が違いますよ。」

「言葉通りに処理するんだったらチャットボットでいいんですよ。「お前の顔なんか見たくない、二度と来るな」という言葉を、「俺が困っていることを、どうして分かってくれないんだ」というメッセージだと理解できるかどうかということだと思うんですよね。言語的コミュニケーションって本当に表面的なもので、相手のまなざしの向こうに助けを求めるSOSが見えるかどうかというのは、すごく重要だと思います。」

「僕らの場合は医療技術で患者をねじ伏せることはできないから、だから逆に患者さんたちの言葉をきちんとキャッチして、真のニーズをつかむことができれば、何をすべきかが明確になるので、最短距離で患者さんを救済できる。」

▶人生の最後の納得感?「どれだけやんちゃができたか」です!

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00505/111100010/

川内さんと、普段よりちょっと歯に衣着せぬ感じの対談をさせていただいています。言葉足らずのところもあると思いますが、読み物としても面白いと思いますので、ぜひ最初から順番に読んでいただけたらと思います。

そして、川内さんの「親不孝介護・距離を取るからうまくいく」(日経BP)は、現在、家族介護をされている方、将来、ご家族の介護を予定されている方には必読の一冊です。

https://www.amazon.co.jp/dp/4296108840

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