先日の投稿に対し、厳しいご意見を頂戴しました。

佐々木理事 2023年 1月17日 Facebook記事より

先日の投稿に対し、厳しいご意見を頂戴しました。Twitterでも多数のご批判をいただいています。

①病院には公的資金が入っているのに対応しないのはおかしい。

②健康保険料払っているのに医療にかかれないのはおかしい。

③やる気がないなら医療をやめろ。

④医療が社会のツケを払ってるじゃない。社会が医療のツケを払っている。

確かにそうなのかもしれません。非医療者の方々の視点から考えてみることを怠っていました。

医療を守るのためにみんな長いこと協力をしてくれていた。そのことに対する感謝の気持ちを失っていました。

反省しています。

政府のスタンスが感染対策緩和に傾いていく中、医療ニーズの増大に対して人的手当ができないまま現場が疲弊していく状況に、もう後がないという危機感から発信したものでした。

多くの誤解を生じ、多くの方に不愉快な思いをさせてしまったことにお詫び申し上げます。申し訳ありません。

ただ、コロナ禍を経てもなお「何があっても医療は通常通り提供されて当然」と考えておられる方が予想以上に多いことがよくわかりました。医療の提供量には限界があります。

それでも、これまで日本の医療は(局所的な被災地を除き)どんな状況でも機能し続けてきました。そしていまも医療を途切れさせまいと現場では努力が重ねられています。

コロナ禍でもベッドが満床でも、診察を受け入れ続ける救急外来があります。都県境を超えて搬送先を確保してくれる救急隊があります。現場の機転と創意工夫でギリギリの綱渡りで医療をつないでいるのです。しかし、一部の地域では災害時に行われるトリアージ(助ける命を選別する)に準ずる状況も生じています。

①なぜ病院には公的資金が配分されているのに、この状況に対応できていないのか。

病院運営に必要なのは資金ですが、医療の提供に必要なのは人です。医師や看護師は簡単に増えません。患者数の増加で診療業務は増大、専門職の感染も加わり現場は慢性的に人手不足。お金が解決する問題ではありません。

②健康保険料を払っているのに対応できないのはおかしい。

平時であれば高水準の医療に容易にアクセスできます。しかし非常時の増大するニーズに対しては、限られた資源配分に優先順位をつけざるを得ません。非常時でも平時同様の医療アクセスを保証するには、おそらく現在の健康保険料では足りません。

③やる気がないなら医療をやめろ。

医療もケアも現場は平時からギリギリの人手で回っています。そんな中、専門職はやる気を超え、使命感で仕事をしています。やりがいも感じています。しかしバーンアウトする仲間も増えています。大切なのはやる気ではなく持続可能な医療・ケアを支える仕組みなのだと思います。

④医療が社会のツケを払ってるのではなく、社会が医療のツケを払っている。

確かにそうなのかもしれません。しかし、医療は社会の一部です。医療の役割を定義するのは社会の側であるはずです。日本は命が大切にされる国です。子どもが病気で死ぬのが当たり前の国もあるのに、日本では、高度な手術にも超高額な抗癌剤にも健康保険が使えます。海外での心臓移植が必要な子どもには数億円の寄付が集まります。お年寄りにも丁寧にケアが行われます。そんな社会だからこそ医療者も大切な命のために全力を尽くします。命を守るための医療を守る。医療崩壊しない程度に感染拡大を抑制する。

そんな方針でコロナ禍の3年間やってきました。その結果、ワクチン接種が行き届くまでの時間を稼ぐことができ、世界的にも人口あたり最小のコロナ死亡で経済活動を正常化させました。

これは素晴らしい成果だと思います。しかし第8波では毎日500人がコロナで亡くなる状況となり、通常医療も逼迫しました。本当に「社会の正常化」のためにこんなにたくさんの犠牲が必要なのか、僕は日々積み上がる死亡者の数を前に強い違和感がありました。

この状況で感染対策緩和を進めていくという政府のメッセージ。

私含め医療者はこれ以上仕事したくないなんて思っていません。

ただ、助かるはずの命が助けられない、そんな状況はなんとしても避けたいだけなのです。そのために必要なのは、マスクの適時着用を継続いただくこと。体調が悪いときは家で休むこと。追加接種含めワクチン接種率を上げること。

経済活動の制限など誰も求めていません。

感染対策の緩和は進めていくべきです。

ただそのメッセージを発するのは今ではないはず。少なくともあと2週間待ってもいいのではないか。僕はそう思います。幸いコロナの新規感染者数は収束しつつあるようです。

重症化・死亡のピークは遅れてきますし、XBB.1.5という感染力の高いオミクロン派生株も日本に侵入しています。まだまだ気は抜けませんが、ご協力いただいた市民の皆様には心から感謝を申し上げます。

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