誰もが、突然死しない限りは、人生のどこかで障害者になる。

NPO法人Life is Beautiful 研修会 佐々木理事 2023年 4月6日 Facebook記事より 

誰もが、突然死しない限りは、人生のどこかで障害者になる。そして、障害とともに生き、障害とともに死んでいく。

そんな僕らがいま熱心に取り組んでいるのは、障害者になるのを予防すること、そして障害者になった人たちの身体機能を回復させること。

もちろん元気でいられる時間をできるだけ長くするのはとても大切なこと。

しかし、加齢に伴う心身の機能低下は生物としての宿命。老化そのものが予防できるわけではない。回復可能な機能障害であれば、最大限の回復を願うのは当然のこと。

しかし機能障害の中には回復不可能なものもある。そして回復不可能な時に「あきらめる」以外の選択肢がない。

本当に大切なのは、身体の機能に障害があったとしても、居場所がある、役割がある、そして生きがいを感じられる。

そんな世の中を目指すことではないのか。

そのためには、それぞれの強みを生かしながら、「就労」を通じて社会の中で活躍できる、そんなことを「当たり前の選択肢」にする必要があるのではないか。

コロナ前の2019年11月、僕はある車椅子のシェフに出会った。

金子淳一郎さんだ。

2015年、若くして交通事故により脊椎損傷となった彼は、絶望のどん底に突き落とされる。これ以上の機能回復はできない、家族をどう養っていけばいいのか。

教えてくれる人も、情報もどこにもない。会社からは解雇され、外出しようにも混雑時はバスにさえ乗せてもらえない。ユニバーサルマナーの浸透やインクルーシブな社会には程遠い現実を痛感する。でも、彼は諦めなかった。

料理の腕を武器に自分で店を立ち上げる。

車いすに対応した厨房、室内空間にもゆとりがあり、トイレも広く障害のある方もスムースに使える。働く人も、食べる人も、障害のある人もない人も、誰もが快適に過ごる。そして何より金子さんの作る料理はとても美味しい。

僕がいただいたジビエのボタン鍋は思い出に残る味だった。

彼は、料理を通じて多くの人を笑顔にしてきた。しかし、金子さんのようなケースは非常にまれだ。

多くの場合、外出すら困難な状況に、多くの人は社会復帰、復学や復職を諦めてしまう。彼のように手に職があれば何とかなるのかもしれない。

しかし、障害者という理由だけで金融機関の融資は厳しく、お店の開設資金の調達にはとても苦労されたという。

社会復帰を諦めているのではない。社会が諦めさせているのだ。

そして、生存を維持するためのお金や医療だけが給付されていく。

日本の障害者は940万人。東京23区の人口に匹敵する。そして、その数は年々増え続けている。

はたして今のままでいいのか。

超高齢化の進行する日本。すべての「健常者」は、いずれ「障害者」になる。

その時、「健常者」に最適化した社会は、いずれすべての人を不幸にしてしまう。

私たちの全員にとって最適な社会とは何なのか。それぞれの強みを生かして活躍できる社会。自分自身に自信と自己肯定感を持てる社会。人と会う、外に出ることを遠慮しなくてよい社会。安心して暮らし続けられる社会。自分の人生を自分で選択できる社会。

障害者のため、ではなく、いずれ障害者となる自分たち自身のためにも、一度、正面からじっくりと向き合ってみたい。そんな思いで、セミナーを企画してみた。

「就労」から始まるインクルーシブな世界。

金子淳一郎さんご本人、そして障害者就労を支えてこられたリハビリ専門職の方々にもご登壇いただき、当事者・支援者、双方の視点から「就労」の大切さ、障害者就労における課題などについて、じっくりと話し合ってみたい。

そして、特に中途障害の人が生活や参加を取り戻すことが当たり前の状況を作るための第一歩にしたい。

4月21日19:00~ZOOMにて。ぜひ一人でも多くの方にご参加いただけたらと思っています。

https://lib-action230421.peatix.com/

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